一杯のラーメンが、世界を繋ぐ😊
長野県・小布施。人口1万人にも満たない、のどかな北信濃の町。 その片隅にある、たった一軒のラーメン屋が今、パリのオペラ座近くで行列を作らせている。
なぜそんなことが起きるのか? 答えはひとことで言えば、「フランチャイズ」という知の輸出装置だ。
「味噌」を世界語にする旅
私たちアセンティア・ホールディングスは、15年かけて27カ国・200店舗超の日本ブランドを海外へ届けてきた。飲食、小売、サービス業——あらゆる業態を通じて痛感してきたことがある。
海外でラーメンは「麺料理」ではない。「スープ料理」なのだ。
そのスープの主役に最もふさわしいのが、「味噌」だと確信した瞬間があった。アメリカ進出を果たしたあるラーメンチェーンのメニュー分析で、群を抜いて評価が高かったのが味噌ラーメンだったのだ。豚骨は美味い。しかしイスラム教徒には食べられない。動物性食品を避けるヴィーガンにも届かない。化学調味料を嫌うヨーロッパの食意識とも相性が悪い。
「本物の味噌ラーメン」を求めて、私は札幌の名店を3日間で15軒以上はしごした。しかし辿り着いた結論は、「ここではない」だった。
答えは、意外なところにあった。
SNSでたまたま目にしたデザイン会社の社長の投稿。「長野で新しい味噌ラーメン店を作ります」——その一文が、すべての始まりだった。
240年の時間が、一杯の中に宿る
たけさんラーメンの味噌は、隣地にある創業240年の老舗味噌蔵が、木樽を使って誂えた専用品だ。
最初に訪れたとき、正直に言えば落胆した。当時のたけさんは豚骨ベースの味噌ラーメンだったからだ。しかし竹田オーナーは「ラーメンクリエイター」だった。私たちの要望——ハラル、ヴィーガン、化学調味料不使用——をたった2週間で試作品として形にした。そうして生まれたのが「土鍋味噌ヴィーガンラーメン」。2018年の小布施店開業から、これが看板メニューとなった。
その後、フランチャイズ本部「Miso Noodle社」を設立。2019年のモンゴル・ウランバートル1号店はマイナス45度の厳冬の地で着実に根を張り、今や2号店も安定稼働している。コロナに阻まれながらも、ベルリンのヴィーガンフェスティバルでは3日間で1000食を完売した。
そしてパリへ。
日本からの視察ツアーに参加した若いフランス在住夫妻が、複数のラーメンブランドを見て回った末に選んだのは、たけさんだった。決め手を後に彼らはこう語った。「ストーリーです」。240年の味噌蔵、土鍋という器、小布施という土地の記憶——フランスという歴史の国の人間が、日本という歴史の国の物語に心を動かされた。
フランチャイズとは、「信頼の複製」だ
物件探し、施工交渉、消防署対応、スタッフ採用——パリ開店の現場作業の9割は、現地加盟店が担った。本部の竹田社長はオープンのために2度パリに飛んだが、「日本から全部管理しよう」とは最初から考えていなかった。
これがフランチャイズの本質だと、私は思っている。
本部が持つのはレシピでも、マニュアルでも、商標だけでもない。その土地で積み重ねてきた「やり方の知恵」と、それを信じて動いてくれる「人」だ。
私が60年の人生で学んだことがある。「何をするかより、誰とするか」。仕事の中身より、共に動く相手が、その仕事の質と喜びを決める。
モンゴルの厳冬の中でラーメン店を軌道に乗せた加盟店オーナー。パリのオペラ座近くで日本の味噌文化を伝え続けるフランス在住夫妻。彼らは単なる「加盟者」ではない。長野の一軒のラーメン屋の哲学を、自分たちの土地の言葉で語り直してくれるパートナーであり、その国での里親だ。
次の扉を開けるのは、あなたかもしれない
円安が続く今、日本のブランドオーナーたちはこれまでにない速度で海外を向き始めている。しかし「どこに出すか」より先に問うべきことがある。「誰と出すか」だ。
たけさんラーメンはまだ、世界の余白に満ちている。 ワルシャワに、バルセロナに、ドバイに——次の土地で、次のパートナーと、次の240年の物語を始める準備がある。
一杯の味噌ラーメンの中に、あなたの国の人々が心を動かされる何かが、きっとある。
その瞬間を求めて私たちは今日も、その「誰か」を探している。
株式会社アセンティア・ホールディングス
代表取締役 土屋 晃
www.assentia-hd.com
